【報告】ギャラリー97 近松素子展 エブリデイ、フォエバ(everyday, forever) vol.4 2021_3

2021年3月2日 ~ 3月13日

東京の緊急事態宣言の解除は?ワクチンは?・・。日々変わっていく日常と不安が交差する毎日。

そんななか、今年も近松素子さんの版画展が開催されました。

3月の声を聞くと、あの心安らぐ世界がギャラリーを包み込んでくれることを、パン屋のスタッフも楽しみに待っていました。

今年は、先の見えない社会の状況を捉え、近松さん自身が自問自答しながら表現してきた作品がそろいました。

作家より/ 近松素子展 エブリデイ、フォエバ(everyday, forever) vol.4に寄せて・・・・・・・・・・・・・・

真昼。光りを増して照らすお日さんは、西に傾き始めると街の風景をあっという間に変える。 夜。闇は視覚から色彩を奪うけど、空はお月さんやお星さんで飾られて今日の終わりを唄ってる。 朝。一日が始まる。見た事ない今日が照らされる。 ・ もはや過去のものになった「あたりまえ」と
新しく始まりだした「あたりまえ」が交差し、
そしてまだまだ未知なことの多い日々。
そこで私も生き、生活を続け、暮らしています。
表現者として何を作り、発信するのか。
問いながら銅に刻み、紙に刷る行為を続けています。
パン・オ・スリールでの展覧会は今回で4回目になります。
今年もまた美味しいパンと一緒に並んで、
版画を飾れることが本当にうれしく、とても楽しみです。

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●待ちに待ったエブリデイ、フォエバ いよいよ搬入・・・・・・・・・・・・・・・・・

3月1日。パンオスリールの7周年のお誕生日に、搬入作業はありました。今年は、近松さんの前に個展を開催していた西村公一さんが、福岡博多駅をハートで埋め尽くすという大仕事のため、最終日の撤収ができないということから、盟友・近松さんが、7周年の記念の虹のマステアートと、力強く「濃く」描かれたウィンドウアートを消したり剥がしたりするところから作業が始まりました。

4月に5回目の姉妹展を予定している、うてなかよこさんとみやたけルキさんが、お手伝い。パンオスリールのアーティストの強い結束力を感じました!

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 キッチンは、若いスタッフが休日に仕込み。そして新作のパンの試作も。

剥がしたマステは、くるくるまるめて再びハートの形に!

さあ、楽しみな個展のスタートです。

 

●繊細な作業と偶然の面白さ、銅版画の世界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

近松さんの表現する銅版画は、「光」を主題にしています。

「光」は彼女の中で色んなイメージに変容し、「日々日常を生きる事」そのものが「光」になっているそうです。

銅の小片に模様をつけてちりばめた様子は、細胞のような、植物のような、星のようなモチーフがふわふわと浮いているように感じられるのが特徴です。

そして、オレンジや黄色、グリーンなどの淡い色合いが重なり、見る人の心を写すように、時には愛らしく、時には妖艶にきらめいています。

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カフェスペースには大型の作品と、墨を思わせるモノトーンの作品が並びました。

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ガラス作家さんとのコラボの額縁。今年は形もいろいろ。

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気に入った作品を、額に入れてもらうこともできます。

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近松さんの作品のもう一つの特徴は、楽しいタイトル。「お使いの途中」「ご挨拶」「お褒めにあずかる」・・など、哲学的ともいえるし、作品自身が擬人化されているようにも感じられるおもしろいネーミングです。どうやって考えるのかなあ。。

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パンと作品のコラボレーション

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●近松さんの技法とこだわり・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、この魅力的な銅版画はどのような工程で、どのようなこだわりで仕上がるのでしょうか?今回は、近松さんのホームページから抜粋させていただきます。

 

==========以下ウエブサイトより抜粋============================

「光」をテーマとした銅版画家|近松素子 (chicamatsu.com)

HOW TO MAKE

FIRST

複数の版や小片の版を用い、何度か重ねて刷って制作しています。刷りながらイメージを作っていくので、最初に予定していたものと変わっていく事も起こります。また、再生の難しいものが多く、版画でありながら殆どの作品がモノタイプ(一点もの)です。

In the process in creating my works, I use plural plates and small pieces of plates and print several times putting them on.As I make image while printing, sometimes it happens to be different from what I plan at first.And many are difficult to reproduce, so though they are printing, most of my works are monotype.

SECOND

小品の作品に限り、多少の違いを了承の上で数点のエディションを刷ります。同じイメージのエディションを刷るよりも、同じ版を使って複数のイメージを創る事に興味があり、版画の魅力の1つと考えています。

As for only small works, I print several editions, being aware that some differences should be made.
I’m interested in creating a number of images by using the same plates, rather than printing editions of the same image. And I think this is one of attractiveness of printing.

THIRD

いくつかのモチーフ、複数の技法、複数の版という色んな要素(element)から作品は構成されています。銅版画は刷るとエンボスができますが、それはそこに版があったという軌跡であり、その事も私の作品に必要な要素の1つです。

My works are made up of various elements, such as several motifs, several skills and several plates.
In intaglio print, emboss is made by printing, and it is the evidence that there was a plate , which is also one of elements necessary for my works.

photo by Sachiko “Molly “Tamura

FOURTH

なぜ版であるか。その問いはいつも自分の中にあります。版を介することに可能性を見出す限り、日々生きる事と重ね合わせながら、イメージと対峙し、版を重ね、表現する。それを繰り返しています。

Why it must be a plate? That question is always in my mind.As far as I find possibility in using plates, with layering the fact of living everyday life, I face images, print many times and express them. That is what I have been doing over and over again.

 

==========以上ウエブサイトより抜粋============================

 

 

●コロナ禍で、搬入搬出時だけの在廊を楽しむ近松さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今年も、長い在廊はできない近松さん。また、昨年2020に延期となった展覧会が今年はいくつか重なり、作品作りに忙しくもあります。

一人カフェスペースにいるときは、テーブルでできる作業をしながら、パンを食べながら・・。

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短い滞在期間に、貪欲に(笑)パンを食べ、お土産にたくさん買っていく近松さん。モーニング、ランチ、パフェ、セムラ・・

年間通して、パンオスリールの情報を見続けていてくれるさすがのチョイスです。通販を利用して、西宮からパンを求めることも。。

 

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●ファンの皆さん、アーティスト仲間、そしてパンを買いに来る人、誰もが足を止めるアート・・・・・・・・・・・・・・

パンを買いに来る人も、奥のスペースまで階段を上がって見ていくことが多い展覧会でした。

また、「お会いしたことはないのですが」「Instagramでファンになりました」という方が多かったのも今回の特徴です。

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そして、「目玉おやじ」もやってきました!搬出を近松さんに頼んだ、西村公一さんです。シュールな写真が撮れました。

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スリールのスタッフも目玉を体験。

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近松さんが在廊するときは、アーティスト仲間から小さなお子さんまで、多くの人が訪れました。

 

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 2週間の会期が無事に終了しました。「無事」とい言葉は、今やいろいろな意味を含んでいる社会的な状況です。

このような状況下で、 表現者として何を作り、発信するのか。悩みながらも、やはり作品に取り組み続け、展覧会を開催し続けること、SNSなどで発信し続けること・・。それが近松さんのいまの答えであり、それは、確実に様々な人の心にとどいているという実感を得た2週間でした。

また来年、どんな風になっているか。会えることを楽しみに。

 

 作家より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日無事にパン・オ・スリールでの展覧会が終了致しました。
緊急事態宣言発令中の中、私自身が他府県からの移動を伴う為、ご案内が十分に行き届かないところがありました。それにも関わらずお運び頂いた皆さま、ほんとにありがとうございました。気にかけて頂いた皆さまにも、感謝申し上げます。
今年も私をウェルカムと受け入れて下さったスリールの須藤ご夫妻、スタッフの皆さま、ありがとうございました!食べきれなかったパンもあり、後ろ髪引かれますが、次のお楽しみにします〜
パワー充電、京都の展覧会に向けてがんばるえ〜‼️
近松素子 ◆プロフィール 神戸市生まれ、神戸市在住 嵯峨美術短期大学ビジュアルデザイン科 卒業 京都インターナショナル美術専門学校 絵画・版画コース 卒業 現在、兵庫県西宮市の銅版画工房アトリエ凹凸にて制作すると共に、 同工房併設の版画教室 銅版画講師 主な個展 ギャラリー白(大阪)’90 ’99 ’00 ’04 ’07 ’09 ’11 ’13 ’15 ’17 ’19 Oギャラリー(東京)’08 ’10 ’12 ’14 ’15 ’16 ’18 ’20 OLD BOOK & GALLERY SHIRASA(神戸)’11 ’12 ’13 ギャラリーアライ(兵庫県西宮市)’16 ‘18 ’20 他多数 主なグループ展 Internatinal Print Exchang programme(インド)’17 ギャラリズム in 中津(大阪・ギャラリー白より出品)’17 いきづく空間(大阪・ギャラリー白)’05〜毎年 アトリエ凹凸展(西宮・大阪・東京・仏・露)’93〜毎年 他多数

 

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