2020年9月29日~10月12日
秋の訪れを感じる10月初旬のギャラリーは、巴里を舞台に。
初めて門田知佐子さんの作品を見たときの驚きを、ぜひご来店の皆さんにも感じてほしいと思い、実現した個展です。
ヨーロッパ、特にフランスを旅して、門田さんがカメラのシャッターを押すように切り取った風景を、そのまま小さな小さな箱に閉じ込めたような作品群です。
愛らしく、どこか切ない小さな作品は、巴里の空や街の色、その香りまで届けてくれる気がします。 今はなかなか旅ができない日々が続いています。門田さんの作品を通して、しばしの旅ができたような2週間でした。
●楽しい搬入風景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
楽しみにしていた個展がいよいよ始まります。これまで少しだけ拝見した小さな作品が、小箱にぎっしりとやってきました。
どんな風に店内に展開されていくのか、本当に楽しみです。
大きめの作品は初めて拝見。封を開けるたびに、「わあすてき」「これもいいですねえ」とため息が出ました。開催前に一番に見られるのは、パン屋の役得です。
個展は何度も経験している門田さん。搬入は順調に進みましたが、大変だったのはウィンドウのパフォーマンス。
「パン・オ・スリールの大きな窓に、個展の案内を書いてみませんか?」というパン屋の無茶ぶりに、驚きながらも真面目に準備をしてきてくださった門田さん。
内側から鏡文字を書くために模造紙をつなぎ合わせ、こんなに大きなタイトルを用意してきてくれました。切り抜いた文字の部分に白い色を塗り込める、初めてのキットパスを体験。
完成しました。さすが!通りを歩く人たちが、個展のことをすぐに理解できる素晴らしい仕上がりになりました。
会期もばっちりと。
●パリ・ノルマンディー その作品群 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
手のひらにのるような小さな作品から、大きな作品まで、一堂に並んだ店内カフェスペース。
階下のカフェスペースには、大きなカフェの作品が。
元々は、こうした大きな作品を描くことが主流だったそうです。個展を開催するようになり、少しずつ、小さな作品を描くようになったそうです。
木に、黒の油絵の具を3回ほど塗り込め、その上からまた、白い絵の具を塗ります。そして、リンカクを削っていくと、下地の黒い部分が現れる。
その黒がまさに、「巴里の輪郭」として生き生きと形をなしていきます。小さな作品は、とても細かな作業になります。
自ら創造したというこの技法。気の遠くなるような作業の積み重ねが、版画にも似た、立体的な奥行きを感じる作品となっていくのです。
パリの風景
今回のテーマは、パリと、ノルマンディー。門田さん自身が訪れたパリの街角、カフェ、ノートルダム寺院やサクレクール。撮った写真を写し取るように、絵にしていきます。奥行きのあるアングルは、あたかも私たち自身がパリの街角にいるような気持ちにさせてくれます。シックな風景に赤や黄色が効いた、センスあふれる作品。
ノルマンディー
今回テーマとなるもう一つの都市は、ノルマンディー。中間的な黄色や水色、ピンクが美しく、朝日や夕日に輝く海が想像されます。
美しい中間色を選び、作り上げる楽しさを、門田さんからいろいろとお聞きしたのも楽しいひとときでした。
額に入れずに仕上げた小箱のような作品も、それぞれ裏にピンがあしらってあり、そのままランダムに壁に飾ることができます。
●展示期間を楽しむ
門田さんは、展示期間中、ほぼ毎日パンオスリールに通い、ランチをしたり、お茶を飲んだり、次々と訪ねてくるお客様とおしゃべりをしてゆっっくりと過ごしました。
静かな印象の作品を生み出す門田さんは、素顔はさっぱりと楽しい方で、知人だけにとどまらず、初めましての方々とも話が弾みます。
門田さんが長い間所属していた現代童画会の恩師や友人の皆さんは、門田さんの作品を見るのを楽しみに、たくさんご来店いただきました。共に汗を流したすてきな仲間たちは、アーティストの視点でじっくりと絵画を鑑賞し、門田さんにエールを送ります。
パン・オ・スリールでも個展を開いたコムロレイコさんは、初日にやってきました。
パンが大好きな、横浜のギャラリー、#art Truthのオーナー。いつもありがとうございます!
門田さんの個展は、お知り合いの方はもちろんのこと、パン・オ・スリールのSNSを見て訪ねてきた方、パンお買いに来たお客様、パン屋に打ち合わせに来た方など、初めて門田さんの作品に出会った方々が、「一目惚れしてしまった」例がたくさんありました。「パリを思い出す」「なんともいえない色合い」・・・。自分の家のリビングや玄関にひとつおいて眺めていたいという声を多く聞きました。
過去にも、1階にあるギャラリーで展示会をした折に、配達途中の宅配便の方が、何度も前を通って、窓越しに絵に惚れ込み、とうとう購入したという素敵な逸話もあったそうです。
あっという間に過ぎてしまった2週間。「とてもお店に合いますね」という声をたくさん聞き、名残惜しい思いがいっぱいでしたが、嬉しいことに、再来年2022年、またたくさんの作品と共に、戻ってきてくれるそうです。
来年2021年は、横浜そごうのギャラリーで、大作を発表予定。そちらもお楽しみに!
門田知佐子「プロフィール」
1996 第22回現代童画会展 初入選
2003 第29回現代童画会展 会友奨励賞受賞
2006 第32回現代童画会展 会員佳作賞受賞 2007 第33回現代童画会展 文部科学大臣賞受賞
2009 神保町 北の丸tinyギャラリーにて「パリの輪郭」初個展 現代童画会「セルビア展」に出品
2010 神保町 北の丸tinyギャラリー「パリの輪郭」Vol.2 個展
2012 自由が丘tinyギャラリー「パリの輪郭」Vol.3 個展 2013 原宿 積雲画廊 童画会グループ展
2013 横浜そごう ギャラリーダダ 個展
2015 積雲画廊 童画会グループ展
2016 ギャラリーダダ 「パリの輪郭」個展
2018 ギャラリーダダ グループ展 2019 ギャラリーダダ 「旅の輪郭」個展
1996年から2018年 美術団体「現代童画会」に所属。現在は東京都内や横浜を中心に 個展・グループ展の活動をしています。
「作家コメント」 パン・オ・スリールでの展示は今回が初めてとなります。毎回異なった素敵な作品と才能豊な作家さんたちを拝見し、いつか自身の作品も仲間入りさせて頂けるといいな~と。 念願かなっての展示となりました。 紹介していただいた作家仲間のコムロレイコさんにはとても感謝しています。 旅先で訪れたフランス・パリの街を25年間描いてきました。画材は油彩を使用、下塗り(数回)、構図のラインを削り、輪郭を残しながら塗る作業を何度も繰り返し描きます。 描く事は訪れた風景を懐かしみ、ひとり心の旅を楽しむ時間でもあります。こちらでは、 ホッと和めるそんな落ち着いた空間のお手伝いが出来ればと思っています。 2週間どうぞよろしくお願いいたします。
会期を終えて(門田さんのSNSより抜粋)