【報告】ギャラリー83 オノマトペ × テキスタイル × 絵本 「てふ ひらり はたり」の世界~スゲノマロ × A.B.Mimura

2020年6月9日 ~ 7月4日

2020年6月、1ヶ月にわたり、スゲノマロさんと A.B.Mimuraさんの二人展が開催されました。

様々な表現で次々と個展を開催しているアーティスト・スゲノマロさんの鮮やかなデザインと、編集者として言葉にこだわり続けてきたA.B.Mimuraさんが紡ぐ、オノマトペ(※注)の世界。

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外から見える窓ガラスには、キットパスで描かれた展示の案内が、道行く人の足を止めさせます。

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●その蝶は生まれ、そして美しく飛び立つ・・作品の数々・・・・・・・・・・・・・・・・

福島で出会った二人の作家がひとつの絵本を紡ぎました。それが今回の二人展のテーマ「てふひらりはたり」です。

この絵本は、「オノマトペの本」という企画、言葉から始まりました。オノマトペ(仏: onomatopée)とは、音を人間の言語で表現した言葉の総称です。まず、心に残る音で紡いだストーリーが生まれ、そこにスゲノさんの鮮やかなテキスタイルデザインが加わって、鮮やかな絵本として完成したのだそうです。

今回の展示では、絵本とともに、そのページを一つ一つをテキスタイルに表現しました。ハンカチに描かれたページは、店内の壁面で一堂に並び、パン屋のギャラリーは絵本の世界に包まれました。

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店内に入ってすぐの飾り棚には、絵本とともに、カード、カレンダー、マグネット、ミニファイルなどのグッズが並びます。

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●来店できない皆さんに向けて 絵本とパンの通販を ・・・・・・・・・・・・

新型コロナの影響がまだまだ続く東京。なかなか渋谷にある当店まで足を運ぶことができないファンの皆さんに向け、絵本とパンの通販セットをコラボ企画しました。

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絵本とパンのセットと、もうひとつは今年後半からの1年間のカレンダーブックのセットです。このカレンダーの最初の一枚を飾る頃、世界はどうなっているでしょう。

来週こそ、来週こそと思いながらなかなか東京に来ることのできない福島在住のスゲノさんは、早速自らお取り寄せを試してくれました。関西などからもセットの申し込みが続々。

●作品その2 陶器と指輪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東京に来ることのできないスゲノさんは、期間中に新たな作品を次々とチャレンジしました。そして、かわいらしい一輪挿しやお皿、指輪などが、作家に替わってパン屋にやってきました。

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●久しぶりのワークショップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東京にいるミムラさんは、展示の搬入・設営から広報、お客様の対応など、1ヶ月本当に心を砕きました。そして、後半には、本の専門家として、すてきなワークショップを2回開催しました。コロナ下で久しぶりに開催するワークショップ。全員マスクの着用はもちろん、お席の間隔を開け、テーブルにもアクリル板をたて、黙々とできる手仕事です。

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♯1 豆本をつくろう

編集者であるミムラさんならではの企画。参加者は好きな絵本を持ち寄りました。なんと、ストーリーではなく、本の構造を見てみるためです。

そして、本にはいろいろな綴じ方があることを知り、自分でもその組み立てをしてみようというワークショップです。好きな布を選んで、紙を糸で綴り、貼り付ける。思ったより難しい、思ったよりうまくできたなど、おやつのパンを食べて語り合いながら、夜は更けていきました。

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#2 絵本をつくろう

2回目のワークショップは、物語を作る会です。少人数で、それぞれが思いついた言葉をつなげ、物語を作ってみるワークショップ。最後に今回も手作りの小さな絵本を仕上げました。

いつも使っていない脳を使った。知らない人同士が言葉でつながる楽しい時間だったなど、大満足の感想が聞こえてきました。

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●週を追うごとに、お客様が多くなる・・・・・・

てふひらりはたりの世界、今回は1ヶ月という長い期間、店内を彩っていただきました。社会の状況が少しずつ、少しずつ外に出てみようという気持ちになってきた時期でした。1週目より2週目と、日を追うごとに、お客様は増えたように感じます。

また、急いでパンを買うだけに来店するだけだったお客様たちも、ちょっと店内でお昼を食べていこう、家族でお茶を飲んで帰ろう、という風に少しずつ変化してきた時期でした。いつも買うパンだけさっと買う、という日常から、「あら、夏の新作が出たのね」と目をとめるなどの小さな変化を見ることが増えてきました。

お客様の気持ちの変化は、店内の壁面に目をとめたり、グッズを手に取ってみるなどの様子からも感じられました。そんな時期にスゲノさんの色鮮やかな蝶と、その誕生を音で表現するミムラさんの言葉は、皆の気持ちの変化を後押ししてくれるような気がしました。

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スゲノさんのファンの方はもちろんですが、SNSをいつもチェックしてくれているパンオスリールのギャラリーの作家さんたちは、時間を見つけてたくさん見に来ました。ワークショップにも参加してくれました。アーティストが注目する作品なのだなあと感じました。

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おかあさんに買ってもらったマグネットで遊ぶ近所のお子さん

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あさいちばんで、ラジオ体操をしてからパンを買いに来るおばあさまが、絵本を買ってくれました。

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ワークショップの申し込みをして帰るアーティストの皆さん

●来年も会いましょう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スゲノさんの作品は、今回の作品とは全く違う世界もたくさんもっています。

少しダークで意味深な物語もたくさん持っています。

会期の終わり、東京は感染者がまた増加し、とうとう、今年は最後まで来ることができなかったスゲノさんですが、来年、またお二人でがらりと違う世界を見せてくれる約束をして、1ヶ月にわたる二人展を終了しました。

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 作家より・・・・・・・・・・・・

 

 

 スゲノマロさんと作るオノマトペの絵本を考えていたときに、出会った文字。

 

  喵

 

中国語で「ミャオ(miāo)」と読みます。そう、日本語の 猫 に似ていますね。

 

てくてく、ふかふか、ざぶーん…

5,000を超える日本語のオノマトペに対し、中国語は約300語ほどらしいです。

 

その時、友人の順子さんが、さらりと中国語で発音してくれました。

ダメもとで、対訳をお願いしたところ快諾。

「完全な翻訳ではなく、世界観を伝える文章に」

そうして、絵本作りの終盤、ステキな中国語が加わりました。

 

絵本の中のことばに、「雨が降った(下雨了)、雪が降った(下雪了)」があります。

オノマトペの絵本ということで、音の響き、音色(音韻)も考えられているのがわかります。

 

日本語のオノマトペからはじまった文が、スゲノさんの美しく艶やかなテキスタイルデザイン、そして中国語と世界が「ぐーん」と広がりました。

 

絵とデザインの美しさ、オノマトペの響き、シンプルなことば、中国語への広がり…気にいっていただけたら、とてもうれしいです。

 

A.B.Mimura

 

 

◆出展者プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

sugenomaro  スゲノマロ/画家、イラストレーター

 

1982年福島県生まれ。福島、東京を中心に展示会を開催。

漆黒ドローイング、イビツなハリ絵、極彩色テキスタイル 。ニッチな雑貨、ナンセンス絵本。

https://www.sugenomaro.com/

 

 

A.B.Mimura ミムラアキコ/企画・編集・執筆

 

福島県生まれ。出版社を経て、販促物企画・制作、機関誌編集などに携わる。

2018年3月、初めての絵本『きいろいくものすのおはなし』を発表後、画家sugenomaroと出会う。

2020年6月、本づくりの日常を綴ったHP「blue butteflies」を open。

https://bluebutterflies.amebaownd.com/  (準備中)

 

 

 

※オノマトペ(仏: onomatopée)とは、音を人間の言語で表現した言葉の総称です。擬音語(ワンワン、がたんごとん)・擬態語(にっこり、てきぱき)などに区別されます。世界各国で表現は多種多様ですが、日本語は、年代を問わず、最も多くのオノマトペが使われる言語のひとつとして知られています。

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